生活トラブルの中でも特に緊急性が高いのは、水道に関するトラブルです。
水が我々の生活に欠かすことのできない存在であるがゆえに、修理に高額な請求をしてくる悪質業者の話が後を絶ちません。
先日も、神戸市での訴訟がニュースになっていました。
全国で相次ぐトイレや風呂場などの水回りの高額請求トラブルは、訴訟に発展するケースも多い。読売新聞の調べでは、水道会社や修理業者を相手取り、返金を求める民事訴訟が県内で少なくとも10件以上起きている。(高額請求問題取材班)
引用元:読売新聞オンライン
元水道業者だった者として、こういった事件を聞くと非常に憤りを感じますが、決してこのような悪質な業者ばかりではないということをわかっていただきたいと切に思います。
しかし同時に、現実にどうしてもこのような悪質業者がいる限り、普段から少しでも水道に関する知識を身に着けておいて、悪質業者に対抗しなければならない必要性も感じます。
この記事は、今まさに水のトラブルを抱えている以下のような方に有益な情報です。
- 自分で修理したい方
- 業者を呼ぼうと考えている方
繰り返しますが、悪質な業者に騙されないためには、水道に関する知識を身に着けておくことが必要です。
つまり、自分で予め水漏れやトラブルの原因を理解しておくことで、悪質業者から全く関係ない修理や部品を買わされることを防ぐことができます。
また、「ここが漏れているので、パッキン交換だよね?」など対等に会話すると、業者の方も「知識があるみたいだから下手な説明はできないな」と思うものです。
そのためにこの記事で、ぜひ水道の知識を身に着けてください。
今回は、洗面所の水漏れに的を絞ってお話させていただきます。
洗面所キャビネットの水漏れ原因調べ方 悪質業者に騙されないために
ひとくちに洗面所の水漏れと言っても、濡れている場所は様々で、どこが濡れているかによって考えられる水漏れ原因もまた変わっていきます。
まずは、水漏れ箇所を特定しましょう。
濡れているのはどこ?
洗面所での水漏れ箇所とそこから特定できる水漏れ原因は、主に2通り考えられます。
- 洗面蛇口またはその周辺⇒蛇口が原因
- 洗面台の床下あるいはキャビネットの中⇒蛇口か配管が原因でなければつまりが原因
洗面蛇口が原因
2ハンドル混合栓
経年劣化によって水漏れを起こしている場合がよくあります。
目に見えて漏水していることもあれば、ゆっくり水漏れしていて、朝「なんだか床が濡れているな」と気が付くこともあります。
2ハンドル混合栓からの水漏れで、調べるべき点は主に3か所です。
ハンドル部分から
ハンドルをひねるとハンドル下部の水漏れがひどくなるような場合、給水栓上部いわゆるスピンドルといわれる部品が摩耗しています。
スピンドルが劣化すると、ハンドルから水漏れするほか、ハンドルをしっかり締めているのに吐水口の水が止まらないなどの症状が出ます。
スピンドルの交換で修理できます。
台と蛇口との接合面から
2ハンドル混合栓が原因で、洗面台の床下やキャビネットの中が濡れている場合、上述したハンドルからの水漏れや本体の劣化破損などで、漏れた水が下まで伝って落ちている可能性があります。
また、蛇口が壊れていなくても、洗面所を使って残った水が隙間からキャビネット内に浸水することがあります。
まずは、2ハンドル混合栓がグラグラしていないか調べてください。
蛇口の吐水口から
吐水口からの水が止まらない場合は、ほとんど上述したスピンドルの劣化が原因です。
これは、水、お湯の区別なくどちらも交換することをお勧めします。
ごくまれに、スピンドルは右回りと左回りのものがあり、水栓やメーカーによって異なったものを使っていることがありますので、交換の際は注意が必要です。
2ハンドル混合栓の自己修理については⇒止水栓で水を止めた後は自分で水漏れ修理 ②浴室2ハンドル混合水栓
シングルレバー混合栓
水漏れ原因に関しては、シングルレバー混合栓も2ハンドル混合栓とさほど違いはありません。
大きな違いは、スピンドルではなく、カートリッジという部品交換が必要になります。
水漏れ箇所
- ハンドル部分から⇒カートリッジ交換が必要
- 台と蛇口との接合面から⇒混合栓がグラグラしていないか確認
- 蛇口の吐水口から⇒カートリッジ交換が必要
シングルレバー混合栓の自己修理について⇒止水栓で水を止めた後は自分で水漏れ修理 ③簡単にカートリッジ交換
ホース引き出し式混合水栓
ホース引き出し式混合水栓は、最近特にマンションなどで主流となっている洗面所の混合水栓です。
2ホール式(洗面台に2つの穴がある)なのは、上記2つの混合栓と変わらないのですが、シングルレバーと吐水部がそれぞれ独立したように見えるつくりになっています。
基本的には、シングルレバーと同じなので、カートリッジ交換で直せる場合が多いです。
水漏れ箇所
- ハンドル部分から⇒カートリッジ交換
- 台と蛇口との接合面から⇒グラグラしていないか確認
- 蛇口の吐水口から⇒カートリッジ交換
シャワーホースが原因
ホース引き出し式で特徴的なのは、シャワーホースが原因となる水漏れが最も多いことです。
注意して調べるべき点は以下3点です。
- シャワーホースの蛇腹部分が破れて水漏れしていないか
- 使用した後の水滴がホースを伝ってキャビネット内に浸水していないか
- 水受けは設置されているか、また満杯になっていないか
現役時代の緊急出動で、最も多かった洗面所の(キャビネット内)水漏れ原因は、このシャワーホースによるものでした。
このシャワーホース式の混合栓は、ホースを出したりしまったりできるため、使用後に多少の水滴がキャビネット内に浸水してしまうことが想定されています。
そのため、この混合栓を使っている洗面台キャビネットの中には、水受けがあらかじめ設置して中が濡れないようにしてあるのです。
水受けの水は定期的に捨てないといけないのですが、意外と知っている人は少ないようです。
短期間でいつもより水受けの水が溜まっていたら、シャワーホースの異常を疑ってください。
配管が原因
配管は蛇口と違って、慣れていない人が修理するのは難しい場合が多いです。
ただ、配管の水漏れで最も多いナット(つなぎ目)の増し締めやパッキン交換程度ならば自己修理も可能ですので、知識としては是非覚えておいてください。
給水管と給湯管
下図は、左がお湯の給湯管、右が水がでる給水管となっています。
パッキンなどが劣化するのはお湯の方が早い傾向にあります。
上の矢印が混合栓と配管を接続しているナット部分で、ここから水漏れしている場合、やはりキャビネット内が水浸しとなり、ひどい時はマンションでは階下漏水を引き起こします。
ゆるんでいるだけということもありますので、増し締めして様子を見ます。
時間をおいて、ティッシュで触れてみてまだ濡れる場合は、ナットの中にあるゴム(紙)パッキンを交換します。
下の矢印は止水栓と配管をシールテープを巻いて接続しています。
ここから水漏れしていると、止水栓を付けなおす必要がありますが、少し難易度が高めですので、自己修理はあまりおすすめしません。
排水管
キャビネットの中が濡れている時は、排水管が原因の場合も多いです。
赤矢印で示しているナット部分が緩んでいないかをまず調べてみて、増し締めしても水漏れする場合は、ナットの中にあるパッキンが劣化している可能性が高いので交換しましょう。
(※パッキンのサイズに注意、メーカーによって異なります)
洗面所から水を流すたびに黄色矢印から水が出てくるときは、排水管がつまっています。
つまりが原因
排水管がつまると、排水ホース差し込み口など密閉されていない部分から水漏れが起こりやすくなります。
水を流すとなかなか排水されないなど、つまりの前兆は気が付きやすいのですが、どのあたりがつまっているのかを特定するのはかなり困難です。
洗面台の排水トラップ内がつまっているのなら、除去するのは比較的容易です。
しかし、排水トラップよりもさらに奥、床下の排水管がつまってしまった場合は、放っておくと洗濯機や台所の排水にも影響が及ぶことがありますので、早めに業者にお願いしましょう。
自分でつまりを直す方法について詳しくは→自分でできるトイレ・排水つまりの対処法と道具 業者を呼ぶと金額は
これからの水栓はセンサー式
蛇口に関わらず、水回りの器具は10年前後で急速に劣化が進みます。
新しく取り換えを検討するなら10年が目安ですが、ここで取り換えを検討される方に少しだけ助言させていただきます。
先日、以下のようなニュースが話題となりました。
地下鉄大江戸線の39名もの運転士が新型コロナウイルスに感染したというもので、そのクラスターとして可能性が高いのは、洗面所の蛇口だったというのです。
東京都営地下鉄大江戸線の清澄乗務区の運転士ら39人の新型コロナ感染が、共同利用する庁舎の洗面所の蛇口経由で広がった可能性が高いことが分かった。
始発電車の乗務に備えて運転士が泊まり込み、トイレ後の手洗いや洗顔などをする庁舎の洗面所では、ハンドルを手で回して水を出したり止めたりするタイプの蛇口を使用。保健所は「歯磨きの際に唾液が付いた手でハンドルに触れたため、ウイルス感染が広まった」とみている。
引用元:日刊ゲンダイDIGITAL
元来、手で回すタイプの蛇口ハンドルは様々な菌がつきやすいと言われてきましたが、新型コロナの影響でその危険性が一気にクローズアップされたということです。
今後は、間違いなくハンドルを回さないセンサー式の水栓が普及していくことになるでしょう。
ご家族の安全を守るために、もし取り換える時はセンサー式を検討してください。
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